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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)7456号 判決 1981年9月21日

原告

関戸盛孝

右訴訟代理人

佐伯幸男

浅井利一

被告

右代表者法務大臣

奥野誠亮

右指定代理人

細井淳久

外七名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告は、原告に対し、金七三五万六、七八一円を支払え。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

主文と同旨

第二  当事者の主張

一  請求原

1  原告は、昭和三七年一一月二四日当時国家公務員である航空自衛隊員として、埼玉県入間市里須八七番地航空自衛隊入間基地(以下「入間基地」という。)内の木造二階建隊舎の二階部分(以下「本件居住区」という。)に居住し、同基地第三補給処に勤務していた。昭和三七年一一月二四日は入間基地所属全部隊が自衛隊法施行規則四三条三項、自衛官の勤務時間及び休暇に関する訓令(昭和三七年一〇月二七日防衛庁訓令第六五号)一一条、一二条による振替休養日(以下単に「振替休養日」という。)であつたが、原告は、同日午前九時ころ、本件居住区の窓から右居住区に接続する渡り廊下のスレート葺き屋根に降りたところ、その部分のスレート葺き屋根が壊れて地上に転落し、その際首を強打し、頸椎麻痺の重傷を負い、四肢麻痺の後遺症を受けるに至つた(以下右事故を「本件事故」という。)。

2  本件事故は、振替休養日に発生したものであるが、以下述べるところから明らかなとおり、公務中の事故である。

(一) 原告は、自衛隊法施行規則五一条、自衛官の居住場所に関する訓令(昭和二九年一〇月二〇日防衛庁訓令第一九号)一条に基づき、入間基地内の隊舎に居住するように義務づけられていたものであるが、かように隊舎内に居住する隊員の外出は許可制とされており、平日は居住隊員の二分の一、休養日はその三分の二までしか外出が許されず、残りの隊員は基地内に残留することとされていた。また、航空自衛隊基地服務規則一一条により、隊員は、基地内の生活において、環境を整理し、清潔整とんを保持し、衛生に留意するよう義務づけられていた。

(二) 前記1のとおり本件事故の発生した昭和三七年一一月二四日は振替休養日であつたが、原告は、当日、外出を許可されていなかつたので、基地内で待機していた。かように休養日に基地内で待機を命ぜられている隊員は、課業にはつかないが、前記(一)のとおり身の回りの整理整とんを行うことが義務づけられていた。

(三) そこで、原告は、昭和三七年一一月二四日午前九時ころ、既に秋の深まりとともに日光もだんだん弱くなつてきている状況下において、前記整理整とんの義務から、毛布を日光消毒しようとした。しかし、既に指定された物干場が洗濯物で一杯となつていた。そこで、原告は、やむを得ず、本件居住区に接続している渡り廊下の屋根に毛布を干すことにし、本件居住区の窓から右渡り廊下の屋根に降りたところ、前記1のとおり本件事故に遭つた。

(四) 以上から明らかなとおり、本件事故は、航空自衛隊基地服務規則一一条に定める清潔、整理整とんという職務行為に付随する行為中の事故であるから公務災害に該当する。

3  また、本件事故は、以下述べるとおり隊舎管理の不完全から生じた事故であり、この点からも、公務災害であることが明らかである。

(一) 昭和四八年一一月一日職厚―九〇五人事院事務総長通達「災害補償制度の運用について」第二、1、(3)によれば、無料国設宿舎において、当該宿舎の不完全又は管理上の不注意によつて発生した負傷は公務上の災害と認定されるべきである旨定めている。

(二) 原告が居住していた本件居住区は、無料国設宿舎であり、右宿舎は、基地司令が管理していた。

(三) 原告は、田舎の高校(神奈川県津久井)を卒業して入隊したばかりの未成年の隊員であり、十分な判断力を持つていなかつた。そこで、基地司令は、右宿舎を管理するにあたり、日本人の習性として屋根の上に乗ることのあること、特に本件居住区の窓から本件渡り廊下の屋根には容易に降りることができるのであるから、前記のとおり判断力の十分でない原告が毛布等を干すため本件居住区の窓から本件渡り廊下の屋根に降りることを予測し、基地内の生活において原告を直接指導監督する地位にあつた内務班長をして、原告に対し、本件渡り廊下の屋根は人の重量を支える強度にないこと及び本件居住区の窓から右渡り廊下の屋根に降りてはならないことについて注意指導させ、もつて本件事故の発生を防止すべき安全管理上の義務があつた。

しかるに、基地司令は、原告が毛布等を干すため本件居住区の窓から本件渡り廊下の屋根に降りることなど予測すらせず、前記安全管理上の義務を怠つた。その結果、本件事故は発生した。

(四) 以上から明らかなとおり、本件事故は、無料国設宿舎を管理していた基地司令の管理上の注意義務違反により発生したものであるから、公務上の災害に該当する。

4  以上のとおり、本件事故は、公務上の災害に該当するので、被告は、国家公務員災害補償法(以下「災害補償法」という。)に基づき原告の被つた後記5の被害を補償すべき義務がある。

5  原告の被害状況

原告は、本件事故発生後直ちに、国立豊岡病院に入院し、第五頸椎脱臼圧迫骨折、頸髄損傷兼骨盤骨折の診断を受け、昭和三七年一一月二九日から同四二年五月三一日までは自衛隊中央病院で治療を受けたが四肢麻痺が後遺症として残つた。原告は、同年六月一日から現在に至るまで、神奈川県立さがみ緑風園で療養しているが、本件事故による四肢麻痺が依然として継続しており、寝たきりの生活を余儀なくされている。

なお、原告は、昭和三九年四月二日、本件事故による四肢麻痺のため、航空自衛隊をやむなく退職した。

以上の原告の被害状況に照らせば、原告の身体障害は、災害補償法別表に定める第一級の障害に該当する。よつて、原告は、災害補償法に基づき、被告から、前記退職後の昭和三九年四月から同五五年三月三一日までの障害補償年金として、別紙1のとおり合計九二六万二、〇八六円の支払いを受ける権利を有している。

6  よつて、原告は、被告に対し、災害補償法に基づき、右障害補償年金の内金として七三五万六、七八一円の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2(一)の事実のうち第一文は認め、第二文は、航空自衛隊基地服務規則一一条で、隊員に対し、基地内の生活において、環境を整理し、清潔整とんを保持し、衛生に留意するように定めている点は認めるが、右規定は、隊員に義務を課したものではない。

3  同2(二)の事実のうち昭和三七年一一月二四日が振替休養日であつたことは認めるが、その余の事実は否認する。原告は、昭和三七年一一月二四日に外出許可申請そのものをしなかつたのであり、また、外出許可のない隊員は、休養日は基地内で休養しているのであつて、待機を命ぜられているものではない。したがつて、外出許可のない隊員は、休養日は、基地内でスポーツ、読書等、自由に時間を使用できるのである。

4  同2(三)の事実のうち指定された物干場が洗濯物で一杯となつていた点は知らず、その余の事実は否認する。原告は、日向ぼつこをしようとして本件事故に遭つたものである。

5  同2(四)は争う。

6  同3(一)及び(二)の各事実は認める。

7  同3(三)及び(四)は争う。なお、原告は、本件事故当時満二一年四月であり、未成年ではない。

8  同4は争う。

9  同5の事実のうち、治療、療養の経過及び退職の点並びに仮に原告の負傷が公務上の災害によるものであり、後遺障害の程度が災害補償法別表に定める第一級の障害に該当するとすれば、同法により原告の受給しうべき昭和三九年四月から同五五年三月三一日までの障害補償年金額が計算上原告主張のとおりとなることは認めるが、原告の後遺症及び現在の生活状況は知らず、その余は争う。

10  同6は争う。

三  抗弁

1  原告は、本件事故発生の日から五年の間、被告に対し、災害補償法に基づく補償請求権を行使しなかつた。よつて、同法二八条により、原告の被告に対する補償請求権は時効により消滅した。

2  仮に災害補償法に基づく補償請求権については同法二八条の適用がないとしても、右請求権には一般法としての会計法三〇条が適用されるべきである。そうだとすれば、原告の被告に対する本件補償請求権は、遅くとも、原告が本訴において右請求権を行使した昭和五三年一二月一五日の口頭弁論期日から五年以前の日までに、既に時効によつて消滅している。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1のうち、原告が本件事故発生の日から五年の間に被告に補償請求権を行使しなかつたことは認めるが、その効果については争う。

2  同2は争う。

五  再抗弁(抗弁1に対して)

被告は、原告に対し、災害補償法八条の規定による通知、すなわち、本件事故につき原告が同法に基づく権利を有している旨の通知をしなかつた。よつて、同法二八条但書により、原告の被告に対する本件補償請求権は時効により消滅していない。

六  再抗弁に対する認否及び反論

1  認否

被告が原告に対し本件事故につき原告が災害補償法に基づく権利を有している旨の通知をしなかつたことは認めるが、その余は争う。

2  反論

(一) 災害補償法二八条但書の適用があるのは、実施機関の通知がなかつたため公務災害による傷病、障害等に該当すべき事実を知ることができず、そのため時効期間が経過した場合に限ると解すべきである。

これを本件についてみると、原告は、次の(1)ないし(4)のとおり、本件後遺障害の発生を災害補償法二八条本文に定める消滅時効期間の満了前に確知し、かつ、これが公務災害によるものであることも当然熟知していたものであるから、本件補償請求権について、同法二八条但書の適用はなく、本件補償請求権は時効により消滅している。

(1) 原告は、本件事故当日である昭和三七年一一月二四日、国立豊岡病院において、第五頸椎脱臼圧迫骨折、頸髄損傷兼骨盤骨折の診断を受け、これを知つていたのであるから、現在の程度の後遺障害が残ることは予見していたものであり、このとき本件後遺障害の発生を知つたというべきである。

(2) 仮に右(1)が認められないとしても、原告は、昭和四一年三月一五日、自衛隊中央病院の医師から同日付けの診断書の交付を受けているが、右診断書の「傷病名」欄、「現病歴(処置及び療養の経過)」欄、「現症(廃疾の程度、機能障害の状況)」欄及び「予後」欄には、別紙2のとおり記載されていた。したがつて、原告は、右同日、右記載の後遺障害が残ることを知つたものというべく、このとき、本件後遺障害の発生を知つたというべきである。

(3) 仮に右(2)が認められないとしても、原告は、昭和四二年五月三一日、自衛隊中央病院を退院しているところ、それに先立つ同月四日に同病院の医師から同日付けの診断書の交付を受けているが、右診断書の「傷病名」欄、「現病歴(処置及び療養の経過)」欄、「現症(廃疾の程度、機能障害の状況)」欄及び「予後」欄には、それぞれ別紙3のとおり記載されていた。したがつて、原告は、右同日、右記載の後遺障害が残ることを知つたものというべく、このとき、本件後遺障害の発生を知つたというべきである。

(4) 仮に右(3)が認められないとしても、原告は、昭和四二年五月三一日、自衛隊中央病院を退院し、同日、神奈川県立さがみ緑風園に入園した。

したがつて、原告は、同日、もはや機能回復の見込みがなく、現在程度の後遣障害が残ることを知つたものというべく、このとき、本件後遺障害の発生を知つたというべきである。

(二) 災害補償法二八条但書の「通知」には、公務災害の認定通知だけでなく、いわゆる公務災害非該当通知をも含むものと解すべきである。

これを本件についてみると、実施機関(航空幕僚長)は、原告が本件補償請求をする前である昭和五二年七月四日、原告に対し、本件事故を公務外の災害と認定した旨の公務災害非該当通知をしている。したがつて、災害補償法二八条但書の適用はなく、本件補償請求権は時効により消滅している。

第三  証拠

理由

一本件事故の発生

請求原因1及び2(一)の第一文の各事実は、当事者間に争いがない。

右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、次の1ないし3の事実が認められ<る。>

1  原告は、昭和三六年四月三日ころ、国家公務員である航空自衛隊員となり、そのころ、山口県防府市にある航空自衛隊第六中隊の教育隊に入隊し、同年一一月ころからは、入間基地に配属され、同基地の第三補給処補給部保管課第一係員として戦闘機の通信電子機材の受入れ及び武器の受入れ、保管等の業務に従事していた。

2  原告は、自衛隊法施行規則五一条、自衛官の居住場所に関する訓令一条に基づき、入間基地内の隊舎に居住するように義務づけられていたため、同基地内にある木造二階建隊舎の二階の一室、すなわち本件居住区に、約一六名の隊員とともに居住し、生活していた。

3  ところで、昭和三七年一一月二四日は、振替休養日であつた。当日、原告は、午前七時ころ起床し、朝食をすませた後、午前九時ころ、天気がよかつたので毛布を干そうとしたが、所定の物干場は既に洗濯物で一杯であつた。そこで、原告は、毛布を本件居住区に接続する渡り廊下の屋根の上に干そうと考え、ゴム長靴をはいたまま、右居住区の窓から右渡り廊下の屋根に降りたところ、降りた部分の屋根が壊れて地上に転落し、その際首を強打し、頸椎麻痺の重傷を負い、その結果、現在もなお四肢麻痺の状態が続き、寝たきりの生活を余儀なくされている。

二ところで、原告は、本件事故は、航空自衛隊基地服務規則に定める清潔、整とんという職務行為に付随する行為中の事故であるから、公務災害に該当する旨主張する。そこで右原告の主張の当否について判断する。

<証拠>を総合すれば、次の1ないし3の事実が認められ<る。>

1  本件事故発生当日は振替休養日とされていたが、自衛官の勤務時間及び休暇に関する訓令によれば、隊員は、休養日には課業に従事しなくてよいものとされていた。ところで、本件事故発生当時、休養日といえども、基地内に居住している隊員のうち三分の一は基地内に残留すべきものと定められていたが、その目的は、非常事態が発生した場合に、残留隊員を課業につかせることにある。したがつて、休養日に基地内に残留している隊員は、非常事態が発生し、当直司令の召集がない限り、基地内で自由に過ごすことができるのである(休養日といえども、基地内に居住している隊員のうち三分の一は基地内に残留すべきものと定められていたことは、当事者間に争いがない。)。

2  また、航空自衛隊基地服務規則一一条一項は、基地内生活は各自の良識と良心に基づき自ら律するを旨とするとともに、人格の修養及び教養の向上を図り、隊員として必要な資質の養成に努めなければならないと定めており、更に、同条三項は、隊員は、環境を整理し、清潔整とんを保持するとともに、衛生に留意し、常に清新の気力をもつて快適な生活を送り、諸規則を確実に実行する良習を養うことに努めなければならない旨規定している。右規則制定の趣旨は、基地内で団体生活を営むにあたつて、隊員が相互に快適な生活を送ることができるように、そのための努力目標を掲げたものに外ならない。すなわち、右規則は、隊員に、日常生活を送るにあたつての心得を説いた訓示規定である。したがつて、右規則に掲げられたことを実践するか否かは、ひとえに、隊員各自の心がけにかかつているのである。

判旨3 ところで、前記一3のとおり本件事故が発生した昭和三七年一一月二四日は振替休養日であつたが、原告は、当日、外出の許可を受けることなく基地内に残留していた。しかし、当日は、本件事故が発生するまで非常事態は発生せず、残留隊員は、基地内で自由に過ごしていた。また、当日に、当直司令等から、残留隊員に対し、毛布を干せとの指示は出ていなかつた。原告は、休養日の自由な時間を利用して、自発的に、日常社会生活の一環として毛布を干そうとして本件事故に遭つた。

以上認定したところによれば、原告が振替休養日である昭和三七年一一月二四日に毛布を干そうとした行為をもつて公務ないしこれに付随する行為と認めることはとうていできない。よつて、原告の主張は失当である。

三また、原告は、本件事故は、無料国設宿舎の管理の不完全から生じた事故であるから、公務災害にあたる旨主張する。そこで、原告の右主張の当否について判断する。

<証拠>を総合すれば、次の1ないし5の事実が認められ<る。>

1  原告が居住していた本件居住区は、無料国設宿舎であり、右宿舎は、基地司令が管理していた(右事実は当事者間に争いがない。)。

2  原告は、本件居住区の窓から本件渡り廊下の屋根に降りて本件事故に遭つたものであるところ、右窓は上下開閉式の窓で、開口部の大きさは横約九五センチメートル、縦約八五センチメートル、床面から窓わく下側までの高さは約七三センチメートルであるが、他方、渡り廊下の屋根の頂上部から右窓わく下側までの高さは、約一六五センチメートルもあり、人が容易に降り立つことができない高さであつた。ところで、本件渡り廊下は、本件居住区を含む隊舎と、約一二メートル離れた向いの隊舎との間を、隊員が、雨天の日でも雨具を使用することなく往来ができるようにするために設置されたものである。そして、本件渡り廊下の屋根は、右設置目的に照らし、棟の部分及び両側の傾斜部軒先近くに各一本ずつの梁があるものの、下張板は張られておらず、厚さ約六ミリメートルの波形のスレート瓦が使用されているだけで、人の重量を支えるだけの強度がなかつた。

3  ところで、原告は、前記一1のとおり教育隊で教育を受けた外、本件居住区にも約一年居住し基地内の生活にも慣れ親しんでいた。そして、本件事故発生当時、原告は、満二一年四月の分別ある青年であつた。

4  また、毛布を干す場所としては、所定の物干場の外、本件居住区の近くに広大な日当りのよい芝生地帯が存在した。

5  以上のとおり、本件居住区及び渡り廊下の構造、毛布を干す場所等を考慮してか、隊員の中で毛布を本件渡り廊下の屋根に干す者はいなかつた。そこで、原告の上司である内務班長らは、原告ら隊員に対し、「本件居住区は二階だから、窓に乗つたりそういう危険なことはするな。」との注意はしていたが、本件渡り廊下の屋根の上に降りるというのは常識的に考えられなかつたので、この点の注意はしなかつた。

判旨以上1ないし5の認定事実、すなわち、本件居住区及び渡り廊下の構造、渡り廊下の設置目的、毛布を干す場所、原告の年令等に鑑みれば、宿舎の管理者において、原告が毛布を干すために本件居住区の窓から渡り廊下の屋根に降りることまで予見し、内務班長をして、原告に対し、本件渡り廊下の屋根は人の重量を支える強度にないこと及び本件居住区の窓から右渡り廊下の屋根に降りないよう注意指導させ、もつて本件事故の発生を防止すべき安全管理上の義務はないと考えるのが相当である。よつて、原告の主張は失当である。

四以上検討したところから明らかなように、本件事故は公務災害に該当しないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。よつて、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(石井健吾 永吉盛雄 難波孝一)

別紙1〜3<省略>

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